先日の日曜日に白金台の八芳園に行ったのですが、
もう桜の花がちらほらと
可愛らしく咲きほころんでしました。
八芳園で何があったのかというと、
伝説のホテルマンであり、
現在はインターナショナルホスピタリティスペシャリスト
として執筆、講演活動を行われている
ケニー奥谷(奥谷啓介)さんの講演会。
お住まいのあるニューヨークから来日され、
珍しく業界向けではない形での講演でした。
奥谷さんといえば、
世界最高峰と言われたプラザ・ホテル・ニューヨークにて
アジア地区営業支配人として10年に渡り勤務した
唯一の日本人。
現在は、日本のサービス業界、
ホテル業界の体質に一石を投じたいという思いで
ご活動されています。
というのも、
日本では、ホテルマンとしての地位や誇りは決して高くなく、
3年持たずに辞めてしまう人が多いという現状があるからだそう。
また、日本のビジネスパーソン全体に、
もっと生産性を上げる仕事の仕方を身に着けてほしいとも。
なぜなら、日本では、孤独を感じている子供が29.8%と
世界でも断トツに多く、
ひとりで食事を摂る「孤食」状態の子供たちが
増えているという現状に問題意識を抱えてらっしゃるからです。
生産性を上げれば、もっと家族の時間も持てるのに…
とお考えなのですね。
そして、日本人は、
国民としての思いやりある「おもてなしの心」は秀でていますが、
サービスを利益に変えることに関しては完全に欧米に劣後している、
欧米のシステムを取り入れるべき、
と主張されています。
滝川クリステルさんのスピーチ後
「おもてなし」という言葉が流行っていますが
そのいい面だけをふんわりと捉えて、
本質的な問題に触れていない発言や主張もよく耳にします。
以前、このメルマガでも
「心のヒビとおもてなしの関係について」
という記事の中で書きましたが、
欧米人が、自分の「主義主張」に
アイデンティティを持っているのに比べ
日本人は、「居場所」に
アイデンティティを持ちがち。
居場所をなくす恐れの強い状態を
精神分析の用語で「基底欠損」と呼び、
日本人にはこの傾向が強い人が
珍しくないそう。
自分を低く見て、相手のために仕えようとすると
だんだん自尊心を奪われていきますし、
本当の創造性のあるホスピタリティは発揮されません。
また、「おもてなし」の名のもとに、
タダ働きをさせられているという認識だと
確かに長くは続けられませんよね。
そして、いちばんの問題は、
欧米ではトップダウンで決断が早く、
個人の責任のもと決済できる裁量が多いのに対し、
日本では、ひとつのことを何度も審議に掛けたり
人の意見を聞いたりするので時間がかかり
個人の裁量でホスピタリティを発揮できる範囲も
ごく限られているということなんです。
サービスをお金に変えるといっても
単純にチップの制度を取り入れるとかではないと思っています。
そういう外側からの動機づけでは、
結局、限界がありますから。
自ら最上のホスピタリティを発揮しようというためには
それこそ、内側から湧いてくるインスピレーションが大切でしょう。
ある時、奥谷さんは、
すでに世界トップクラスのホテルマンの上司に
「何のために働いているのか?」
と聞かれたらしいのです。
もしそう聞かれたら、あなたならどう答えますか?
その時、奥谷さんは、考えた挙句、
「お客様に喜んで頂くために…」
というようなお答えをされたそうです。
そして、上司から言われたのが、
“人のためではなく、
自分のために働いていると言えて本物”
という内容だったそう。
ここで言う「自分のために働く」とは、
もちろん自己中になれ!ということではなく、
綺麗ごとや建前でなく、
内側から湧き出る本音の部分で
自分を喜ばせることができるか?
という意味ですね。
「お客様が喜ぶことによって自分が喜べるから働く状態」
ということです。
人は、自分の最高の価値観を満たそうとする時、
最もその能力が引き出されるといいます。
どんな価値を満たすために働くのか?という動機づけは
やる気を高めるのに役立ちますが、
基本として、仕事や仕事を通じての経験はすべて
「自分のため、ありがたい」、
という意識を持つことが大事なんですね。
人のためにということで、
かえって相手は圧迫感や有難迷惑、悪いなという気持ちを
抱きかねませんしね。
(銀座でも、相手に嫌われまいと気を遣ってばかりの女性よりも
仕事といえども、本人自身も楽しみモードにスイッチを入れて、
楽しみながら工夫できる女性の方が、断然モテますよ。)
超一流の働き方とは、
自分に制限をかけずに高めていくことが求められますが、
日本人は、どうしても制限を設けがち。
日本人の「和」を尊ぶ心は、多様性を認め合い助け合う世界を
可能にしてくれる素晴らしいものだと思っていますが、
一方、
みんなと同じが安心、
抜きんでてはいけない、
目立ってはいけない
(そうしないと居場所をなくしてしまうよ)
という方向に向かいやすいマイナス面も否めません。
日本になぜ、トップエリートが育ちづらいのか?
という原因には、こういう背景も影響しているでしょう。
奥谷さんは、そういったところにも、活を入れたい!と
お考えのようです。
私自身も、実力主義で、好きなだけ頑張りがいがある場所の方が
好きだったので、会社員よりも銀座の方がやりがいを
持てたのだと思います。
本当に自分の学びになる好きなことをして、
お客様を元気づけることで、
そのまわりの従業員の方や家族の方もも幸せになっていただければ
という思いにブレがなかったのです。
余談ですが、銀座のシステムを少し説明すると、
ヘルプというお給料をもらう立場の女性がいて、
少し担当のお客様が増えてくると、
ノルマと売り上げに応じた
インセンティブのようなのが発生するようになります。
そして、トップクラスになると、完全に売り上げ制、
つまりフルコミッション営業の状態になり
最後は、契約金を頂いてお店を選べる立場になります。
(自分でお店を持つ場合は話が別ですが。)
自分の裁量でホスピタリティを発揮できるという意味では
とてもやりがいがあったわけです。
何がいいたいかと言うと、
まわりに気を遣って、こじんまり生きようとするより
一流を目指して走れる人を増やしていきたいということ。
(誰だってその素質があると思うから)
年収300万円時代と言われる中で、
どうやって無駄をなくして平凡に生きていくかに
心を砕く若い人たちが増えていると言いますが、
収入はさておき、自分の可能性を開くことに貪欲な人を
応援していきたいという気持ちがあるんですね。
(収入は、やり方で付いてくるので)
生き方はもちろんそれぞれ好きに選べばいいのですが、
自分の最上を目指すことで、まわりを触発し、
いい影響を与えていけるリーダー的な存在を増やしたいというのは
理屈無しに湧いてくる思いなのです。
実際、そういった方が来て下さるケースが多いですしね。
奥谷さんの、日本に一流を、
一流のサービスマンを育てたいという思いと重なって、
首を縦に振りっぱなしの講演会でした。
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講演会後、
奥谷さんに打ち上げにご一緒させて頂いたのですが
61歳というご年齢を伺ってたまげました!
スリムでいらして、40代半ばから、
せいぜい50くらいにしか見えなかったので。。。
好きなことしていると若々しいっていう
いい例だなと思いました。
さすが、セントラルパークでのランニングを
毎週欠かさないというだけあります。
そんな奥谷さんおススメの
今、NYで日本人が満足できるであろうホテルとは、
いちばんが、フォーシーズンズホテル。
続いてマンダリンオリエンタル、セントレジスだそうです。
NYは行ったことがないのですが、とっても行きたくなりました。
奥谷さんの代表的な著書をご紹介しておきますね。
「サービス発展途上国日本
―“お客様は神様です”の勘違いが、日本を駄目にする」
http://urx.nu/7bCJ
「世界最高ホテル「ザ・プラザ」 超一流の働き方」
http://urx.nu/7bD4
今日は、3月11日。
三年前の惨事に、心からご冥福をお祈りします。
あの時に、思いやり、助け合いの精神を
素晴らしいと絶賛された日本人。
そこに、いい意味での自己愛を育み
精神的なリーダーとしての役割を担っていかれればと
考えています。
お読みくださりありがとうございした。